服薬指導にコツってあるの?〜はじめての人もいまさらの人も〜

服薬指導にコツってあるの?〜はじめての人もいまさらの人も〜

薬剤師の業務の中でも最重要事項とも言える服薬指導ですが、どのようにすれば上手くできるのか、悩む方も少なくないのでは?薬の適正仕様のため、また薬剤師が法的に身を守るための服薬指導を考えましょう。

服薬指導というと、薬剤師が患者さんに薬のことを一方的に教えてあげること、に思えるかもしれません。しかし実際には、患者さんの健康状況や薬に対しての疑問などを聞き出し、それに対してわかりやすい言葉で説明やアドバイスをする必要があります。

あくまで人と人とのコミュニケーションであることを意識し、自分の知識をひけらかすことなく、親身でシンプルな服薬指導を心がけましょう。またときには困った患者さん、相性が悪い患者さんもいると割り切った上で、適切な対応ができるようにしましょう。

服薬指導は、薬剤師の職務の中でも最も重要と言える業務です。医薬品の用法用量や相互作用などの情報を説明し、患者さんが安全にお薬を服用できるようにする法的義務が、薬剤師法および医薬品医療機器法において規定されています。

そもそも服薬指導とは?『指導』だなんて大げさだけど

数ある薬剤師の業務の中でも、最も重要かつやりがいのある仕事、それが服薬指導ではないでしょうか?ただ薬を渡すだけではなく、患者さんが安全に、そして安心して服用できるよう、服薬指導は必要不可欠な業務と言えます。

また、薬剤師法および医薬品医療機器法により、患者さんへ服薬指導をする義務があります。薬の適正仕様のために、そして薬剤師が法的に身を守るためにも服薬指導は重要なのです。

服薬指導の内容ですが、患者さんが初診の場合と二回目以降の場合でいくらか異なります。特に初回の服薬指導では、既往歴・合併症・アレルギー歴・嗜好(アルコールやタバコなど)や他院他科の受診・併用薬のなどを念入りに確認しなければなりません。

くわえて、処方された薬の説明(薬理作用及び副作用、期待される治療効果、薬の保管の仕方、治療の方針など)を適切に行い、場合によっては生活習慣における注意やお薬手帳の活用方法なども説明します。

二回目以降の服薬指導では、服用状況の確認を主に行います。副作用の有無や薬の効果を確認し、服用上の問題がなかったか、治療についての疑問や悩みなどがないかを聞き出します。

『服薬指導』というと、なんだか薬剤師がいろいろと教えてあげなければならないように感じられるかもしれませんね。ですが実際は、患者さんの状況や考えを上手く引き出し、それに対して必要なだけのアドバイスをすることが大切です。

患者さんがわかりやすいように、ってどういうこと

服薬指導をするにあたって、大学の先生や実務実習先の薬剤師や職場の先輩薬剤師から、とにかく『わかりやすく』説明するようにと教えられているかもしれませんね。ですが、その『わかりやすく』って一体どういうことなのでしょう?

ここでいう『わかりやすく』とは、もちろん『患者さんが理解できるように』ということです。でもこれが案外難しかったりします。なぜなら、人はついつい『自分がわかっていることは他人も当然知っている』と思いがちだからです。

たとえば、薬剤師からしてみれば「抗生物質」「点鼻薬」「炎症」「去痰」なんて単語は普段からよく使いますし、知っていて当たり前の言葉ばかりです。ですが、一般的な患者さんからしてみればどうでしょうか?これらは耳で聞いて、すぐにイメージができる言葉でしょうか?

患者さんは基本的に『薬や病気のことに詳しくない』ということを、本当にちゃんと理解しておく必要があります。患者さんが詳しくないのは当然のことなのです。だからこそ、薬や病気についての知識を学んできた薬剤師という存在が活かされるのですから。

ですから、自分たちが当たり前のように使っている単語や言い回しを言い換えることができないかを考えてみてはいかがでしょうか。「バイキンを抑えるお薬」「鼻に直接吹き付けるお薬」「赤く腫れて熱を持っている」「痰を取り除く」など、薬剤師には簡単すぎる言い方でも、患者さんにとってはより『わかりやすく』伝わるかもしれません。

そもそも、人は耳慣れないカタカナの言葉に案外弱いもので、薬の名前も例外ではありません。OTCになっているロキソニンなどはまだ馴染みがあるかもしれませんが、同じ鎮痛剤でもセレコックスなどは初めて聞く、なんて人もいるでしょう。聞き覚えのない言葉を投げかけられると、人はそこで意識が止まってしまいます。

なので薬の名前をつらつらと読み上げるよりは、例えば「緑のヒートのお薬」など、視覚でわかりやすい説明の方が患者さんの理解が得られやすいです。また、自分の薬を周囲の他の誰かに聞かれる・知られることを嫌がる患者さんへの配慮にもなります。

服薬指導も結局は人と人とのコミュニケーション

薬の情報を正しく伝えることが服薬指導の目的ですが、そのことだけに気を取られてしまいがちです。薬剤師らしく患者さんに指導しなければならないと意気込む前に、人間同士のコミュニケーションであるということを意識したいものです。

まずは笑顔でご挨拶をし、患者さんの目を見て話すようにします。当たり前のことかもしれませんが、特に慣れないうちは、薬の説明を熱心にするあまりに薬や薬の説明書にばかり目が行ってしまう人も少なくありません。もちろん、笑顔はニコニコと。ニヤニヤ、にならないようにしましょう。

また、はじめて投薬する患者さんには自分の名前を名乗るのもいいでしょう。これだけでも患者さんはリラックスしてお話することができます。どこの誰かわからない人と話をするよりも、名前だけでも知らせていれば安心できます。

こうしてせっかく話をしてもらいやすくなったのに、あれもこれも薬の説明をしなければと必死になるあまり、患者さんの話を遮ったり、適当に流してしまったりすることがないように気をつけましょう。自分の話が伝わっていない、聞いてもらえていないという状況は、案外すぐに察しがついてしまうものです。

患者さんと医療人という関係性ではありますが、どんなに説明が適切でも、事務的・高圧的な言葉では相手に届かないでしょう。家族や友人と行った親しい人の話を聞くように、親身に接したいものです。また、相手をより知りたいという気持ちを持てば、患者さんの体調の変化や不安、悩みにも気づきやすくなるでしょう。

薬剤師だからと、上手に難しく話そうとしなくていい

勉強会や研修などで、常に自己研鑽する熱心な薬剤師の方も少なくないと思われます。薬剤師はいつでも、最新の薬や治療方法などの知識を深めていく必要があります。

しかし、そうした知識を患者さんにひけらかすのは疑問です。知識は自分の中で整理していれば、それだけで服薬指導の説得力が増します。新しく学んだことを披露したくなる気持ちもあるかもしれませんが、それらは自分の内に留めておきましょう。

もちろん、中には詳しい薬理作用などを知りたがる患者さんもいることでしょう。ですが大半の患者さんは、小難しいことには興味がなくシンプルなことを知りたいのです。服薬指導は報告会や学会発表の場ではありません。

飲み忘れた時はどうしたらいいのかとか、昼食を摂らないのだけど薬はどう飲めばいいのかとか、薬剤師にとってはしょっちゅう説明していることでも、患者さんにとっては新鮮で必要な情報なのです。ですから、何も難しいことを上手に話そうとしなくていいのです。

自分が上手く説明をすることだけに気を取られると、患者さんはただうわの空で適当に相槌を打つだけ、になっていたりします。患者さんの反応をよく見て、自己満足ではなく本当に必要と思われる情報をていねいに伝えるよう心がけましょう。

こんな患者さんもいる、と割り切ることも必要

日々仕事をしていると、いろんな患者さんが来られます。服薬指導をしていても、ときにはちょっと困った患者さんと接することもあるかと思います。体調や症状は医師に伝えているから薬剤師は薬を出すだけでいい、という考えを持っている患者さんもいまだに少なからずいます。

とはいえ服薬指導は業務上の義務でもありますし、説明しなかったがゆえに後で何かトラブルが起きても困りますね。こういったちょっと困った患者さんに限って、何か問題が起きれば全て薬剤師の責任にしかねません。

また、どのような患者さんが相手でもていねいに対応したいのはやまやまですが、薬剤師といえども一人の人間ですから、あまり頑なな態度を取られてしまうとこちらも気持ちが疲れてしまうのが正直なところです。

ですから、全ての患者さんに完璧な服薬指導をすることはできない、と割り切ることも必要です。その上で、その時々の最善の行動を取るようにしましょう。薬剤師の存在意義や服薬指導の必要性を理解してもられるように、日々の業務でアプローチしていくことも重要です。

大半の患者さんは薬剤師に対して敵対的ではなく、ちゃんと服薬指導できる場合がほとんどだと思われます。誠意を持って仕事をしていれば、患者さんから思いがけず喜んでもらえたり、不安が解消されたと感謝されることもあるでしょう。やりがいに繋がる瞬間を大切にしたいものです。

どうしても合わない人というのは仕事に限らず出てくるものですから、一部の患者さんとのコミュニケーションが上手くいかないからといって、あまり落ち込んだり気を揉み過ぎたりしなくてもいいのです。また、正当な理由なく治療に関する指導に従わない患者さんがいる場合、保険者への通知が義務づけられています。あまりに悪質な場合などは通知を検討しても良いでしょう。


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