憧れだけで終わらない、がん専門薬剤師の働き方

憧れだけで終わらない、がん専門薬剤師の働き方

専門薬剤師の中でも、唯一広告可能の資格であり人気が高いのが「がん専門薬剤師」です。認定薬剤師の資格を取った後もさらに5年以上の研修受講や講習会の履修、がん患者への薬剤管理指導の実績の提出と試験の合格を経てやっと取得できる資格です。

医師や看護師、放射線技師などの医療スタッフが連携してがん治療を行う中で、がん専門薬剤師の役割は、抗がん剤の投与量・期間選択の患者さんへ治療計画及び薬の説明、副作用への対策や抗がん薬を安全に取り扱うための管理・無菌製剤の調製、緩和ケアなど多岐にわたっています。

がん専門薬剤師の多くは高度専門医療をおこなう病院や、各地の国立がんセンターなどで活躍しています。製薬会社の新薬開発部門や臨床の研究に携わることもあり、多方面でその専門性を活かしています。

がん専門薬剤師とは、日本病院薬剤師会が2007年に発足した専門薬剤師制度の一つです。2009年には新たに日本医療薬学会でがん専門薬剤師制度を発足しされました。薬剤師唯一の「広告できる資格」としても知られています。

専門薬剤師ってなんだか素敵

薬剤師さんがキャリアアップを志す上で一度は耳にする言葉が「専門薬剤師」ですよね。専門薬剤師とは各専門領域の医学や医療、薬物治療の高度な知識と技能を持つ言わば薬のエキスパートのことです。

医師や看護師不足が叫ばれている昨今、医師が医療の全てを担うのではなく、チーム医療の中で医療スタッフがそれぞれの責任で業務に取り掛からなければなりません。薬剤師も医療の場で最新の薬学的情報を医師や医療スタッフに提供し、効果的かつ安全な治療に貢献していく必要があるでしょう。

よって専門薬剤師の需要は日々高まっていると言えます。専門薬剤師になるにはまず「認定薬剤師」の資格を取得したのち、さらに実務経験や研究業績を重ね、研修や講習を受講し試験に合格する必要があります。また認定を受けた後も5年毎の資格更新が必要です。

現在、日本医療薬学会ではがん・感染制御・精神科・妊婦、授乳婦・HIV感染症の 5 つの領域で専門薬剤師を認定しています。その中でも、がん専門薬剤師は薬剤師唯一の「広告できる資格」として知られています。

がん医療の高度化に伴い良質かつ安全な医療を進められるよう、薬剤師にもより専門的な知識・技術と臨床経験が求められます。がん専門薬剤師の資格取得によって医療スタッフとの連携強化や、患者さんの安心にも繋がることが期待されます。

もちろん、資格取得の過程には苦労もあることでしょう。ですが患者さんの治療に日々携わる中で自然と資格取得に結びついたという人も少なくありません。専門薬剤師なんて大変そうだし自分には無理かも……と諦めるのは早いかもしれませんよ。

がん専門薬剤師になるには

具体的に、がん専門薬剤師になるには何をすれば良いのでしょうか?まず前提として薬剤師としての実務経験が5年以上あること、日本医療薬学会の会員であること、認定薬剤師の資格を取得していることが条件です。

くわえて、日本医療薬学会が認定するがん専門薬剤師研修施設でがん薬物療法に関する研修を5年以上受け、がん領域の講習会を50単位以上履修する必要があります。また、がん患者への薬剤管理指導の実績の提出(50症例、3臓器・領域以上の癌種)も必須です。

この実績とは一般的な薬剤管理指導業務ではなく、がん専門薬剤師として相応しく正しい根拠に基づいて医師や看護師への提案や、がん患者さんに対してのどのように服薬指導をしたかといった薬学的な介入実績です。抗がん剤治療だけでなく、支持療法や緩和医療も含むがん薬物療法全般の実績が求められます。

このような条件を経て認定審査を通過し、はじめて認定試験を受けることができます。3つ以上のがんの種類で症例を提出するにあたって、自身の所属する病棟で扱う科目以外の症例をどのように集めるかが難しい課題のようです。

資格取得後も5年毎の更新が必要です。講習会の受講や症例の提出を継続しなければならないため、資格を取った後も臨床の現場において知識と経験のアップデートが求められると言えます。

がん専門薬剤師の働き方って?

がん専門薬剤師の資格取得後は、どのような活躍が期待されるでしょうか?医師への提案や他のスタッフとの連携がスムーズになりチーム医療への貢献度が上がる、患者さんからがん専門の薬剤師として信頼されるなど、多くのメリットがあることでしょう。

がん専門薬剤師の役割の一つは、抗がん剤の量や投与間隔、抗がん剤の組み合わせなどの治療方針を患者さんの体の状態から適切に選択・確認することです。また吐き気などの副作用の軽減対策も業務の一環です。これらをふまえて患者さんへ治療計画の内容や薬の説明を行います。

さらに、細胞毒性のある抗がん剤の被曝は流産・低体重児の出産・先天性奇形など人体へのリスクがあります。よって抗がん剤を安全に取り扱うために、薬剤師や看護師の抗がん薬取り扱いにあたって、薬剤に直接触れないような調製の指導と管理を徹底して行います。

また、がん専門薬剤師はがん薬物療法そのものだけでなく、がんの痛み緩和に対する薬物治療にも精通しなければなりません。患者さんの体の痛みの強さに応じて、医師が適切な薬を処方できるよう支援するのも重要な業務です。

このようにがん専門薬剤師はがん治療に関わるあらゆる薬に対して高度な知識・技能を持つこと、最新の情報を収集してがん薬物治療を発展させることが求められます。資格を取ることで、がん専門の薬剤師としての責任感をより強く持った働き方ができるでしょう。

がん専門薬剤師はどこで活躍しているのか

がん専門薬剤師の大半は大学病院や総合病院、医療センターなどに勤務していると言えます。勤務先の病院でがんの症例を多く扱い、先輩や上司の薬剤師がほとんど資格を持っている、と言った環境で自然と取得したという人も少なくないでしょう。

医科大学病院及び大学附属病院などの高度専門医療をおこなう病院や、各地の国立がんセンターで多くのがん専門薬剤師が活躍しています。チーム医療のスタッフとしてカンファレンスや患者会、勉強会などへ参加して、医師との間をとり持つ役割を担います。

ほかにも医療研究センターや小児科病院、訪問看護を行なう診療所、地域の調剤薬局など、多様な就業先があります。製薬会社の新薬開発部門や臨床の研究に携わるといった活躍も期待されています。

がん専門薬剤師になると専門薬剤師認定者名簿への掲載が必須となります。所属施設なども公開されるので、参考として見てみるのもいいでしょう。もちろん、自分が取得した際も名簿に掲載されますので、専門薬剤師としてその施設に所属している責任が常につきまとうことをお忘れなく……。

結局、がん専門薬剤師になるのに有利なのは?

専門薬剤師の中でもがん専門薬剤師は人気が高いようですが、いずれにせよ長い期間をかけて専門性を高めていく必要があります。まずは認定薬剤師を取得する必要もあり、根気強く知識を深め経験を積んでいく覚悟がいるのは言うまでもありません。

多くの症例に触れ、臨床の現場で最先端の薬物治療を学ぶには、やはり総合病院や大学病院などの大きな病院で勤務していることが有利になります。逆に言えば一般的な調剤薬局やドラッグストア勤務の場合は資格取得がより難しくなるかもしれません。

今勤めている病院でがん領域での経験・活躍が豊富であるなら、それらを活かして資格を取得することで確実なキャリアアップが望めるでしょう。日々の業務の積み重ねを基盤にするのが最善と思われます。

取得は簡単ではないものの、専門薬剤師はキャリアアップとやりがいを求めて挑戦する価値のある資格です。ただ単に処方せんを眺めるだけ、医師の言うことを聞くだけではなく、広い視野で物事を見て患者さんのために努力できる人、チーム医療の一員として意欲的にコミュニケーションを取れる人なら、憧れだけで終わらずいずれ薬のスペシャリストになれることでしょう。


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