看護師の魅力は見えない部分にある。「ありがとう」が全てでした。

看護師の魅力は見えない部分にある。「ありがとう」が全てでした。

私は看護師になって1年目の新人ナースです。まだまだ新人なので覚えることも多く、日々の業務に付いていくことだけで必死な状態で周囲が見えず自分のこと以外考える余裕もありません。学生時代の臨床実習は厳しくて辛いと聞いていたのですが、私は楽しく終え看護師の魅力を感じ「働き出したら楽しい日々が待っている」と胸を馳せていました。

描いていた理想と現実の違いに四苦八苦する毎日

しかし、臨床で働き始めた今は楽しい実習の思い出とはかけ離れた現実を突きつけられ、「何が楽しくて看護師なんかやっているのだろう。」という想いが日々頭の中を巡っていました。業務と時間に追われ自分の思い通りに進まない毎日、患者様の話を聞いてあげたい気持ちはあるのに時間がないため話を急かしてしまう自分に嫌気が差していました。

慣れない環境と自分の思い通りに進まないストレスもあり私は自分に対して自信が持てなくなってしまい、「こんな大変な仕事にやりがいを感じないし辞めよう」という思いまで感じはじめていました。

毎日出勤して情報収集を行い朝一のバイタルサインは時間との勝負で病棟内を走り合間に患者様の処置をこなし、気が付けば夕方で1番遅くまで居残りで記録をする、まともに患者様と話す時間もなくやっている意味があるのか自分でも分からなくなってしまいました。今の環境から逃げたいという思いもありましたが、気持ちが疲れてしまい転職をする勇気までは出なかったのです。

そんな時、ある患者様が入院してきました。患者様は癌が全身に転移しておりステージⅣと診断され余命は3か月と本人も家族も宣告を受けており家族も頻繁に見舞いに来ていました。

私が受け持ちとなったのですが、患者様は脳梗塞による後遺症で失語症があり言葉を発することが出来ずコミュニケーションが難しい状態だったため、訴えていることが分からず患者様が伝わらないと怒ってしまうこともありました。私はなんとか訴えや思いを伝える方法はないかと毎日患者様とのかかわりの中で解決策を考えていました。

ある日浮かんだアイデアで、業務に劇的な変化が

私はある解決策を思いつき実行しました。毎日患者様に関わっていると何となくニュアンスで訴えていることが分かるようになってきたので、分かったことを1冊のノートに患者様の目の前で書き留めることにしました。始めは言っていることを書き留めるだけでしたが、だんだんその日にあったことやおいしかった食事のメニュー、リハビリの内容など出来事を日記風に書き留めておき家族が見舞いに来た際に読んでもらうようにしました。

びっしりと書かれたノートを見た家族は「脳梗塞になってから会話が出来なくて訴えていることも分かってあげられず悩んでいたけど、これを読んだら会話が出来た気分になれてうれしい。」と涙を流し喜んでいる様子でした。その日から家族と患者様の思い出の交換ノートが始まりました。

交換ノートが始まり1か月ほど経った頃に患者様は転院してしまいましたが、最後に家族の方から「あなたに担当してもらえて本当に良かった。脳梗塞になって会話が出来なくなってから考えていることも分からなくなって最後に何がしてあげられるのだろうと思って。本当にありがとう。」という言葉をいただきました。この時に「ありがとう」という言葉の本当の重みと自分自身の中に染み渡る感動を肌で感じることができ、初めて看護師をやっていて良かったと思いました。

業務に追われる日々の中で目の前のことに必死だった私は、看護師としてではなく人として大切なことを忘れていましたが、この出来事のおかげで成長することができました。「看護師の何が魅力で続けているの?」と聞かれることもありますが、「ありがとう」と喜ぶ姿を目の前で見て感じる感動は看護師にしか味わうことができません。


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