遺伝子治療に携わる遺伝看護専門看護師の役割とは?

遺伝子治療に携わる遺伝看護専門看護師の役割とは?

医学の進歩によって遺伝子レベルで病気を診断できる時代になり、診断だけでなく予防医療に活用できると期待される反面、様々な倫理的葛藤が生じることもあります。

遺伝子レベルでの診断や治療は医学の大きな発展となりますが、発展とともに倫理的な問題や議論が生じることも。

遺伝看護専門看護師は、進化する遺伝子医療の今後に期待される存在となるでしょう。

遺伝看護専門看護師とは、患者さんの遺伝的な課題を見極め、診断や予防、治療に伴う意思決定支援を行い、世代を超えて必要な医療やケアを受けることができる体制とゲノム医療の発展に貢献することが期待されています。遺伝子レベルの医療や診断は今後も発展していくことが見込まれており、遺伝看護専門看護師のニーズも高まることが考えられます。2016年に特定されたばかりの新しい専門分野であり、2017年の12月ごろに資格取得者が誕生する見込みです。

遺伝子治療に携わる遺伝看護専門看護師とは?

遺伝子治療に携わる遺伝看護専門看護師とは、どのような看護師なのでしょうか?

遺伝看護専門看護師は、遺伝子レベルの疾患やその治療に専門的な知識を持った高いレベルの看護ケアを提供する役割があります。

遺伝看護は1999年に始まった遺伝に関する学習会が発展し、2005年に日本遺伝看護学会が設立されました。日本遺伝看護学会の目的は、遺伝に関わる保険医療における看護職の役割を明確にし、遺伝看護サービスの質を向上することです。遺伝医療は急速な発展を遂げていますが、患者さんやその家族への組織的な取り組みは遅れており、偏見や差別にさらされているという現状があります。

このような状況を、看護職が中心となって質の高い看護ケアを提供できるよう遺伝看護学会では、遺伝看護について取り組みを行なっているのです。

遺伝看護とは、あまり聞きなれないという人も多いですが、遺伝子レベルの疾患のことをさします。例えばがんが遺伝するという不安やお腹の子どもの病気が不安だから遺伝子検査を受けるという遺伝子レベルの疑問や治療に関わる分野が遺伝看護です。

親から子供への病気が遺伝することや、遺伝的な体質であったり遺伝子レベルでの治療や疑問に対して、患者さんに寄り添い遺伝情報を共有することなどの支援を行います。そして、遺伝子レベルの治療に関しての意思決定のプロセスを支えるなどのサポートも行う役割があるのです。

遺伝看護専門看護師として働くために必要な資格とは?

遺伝看護専門看護師として働くために必要な資格はどのようなものなのか?

遺伝看護専門看護師として働くためには、最低限の条件として看護師免許を取得していることが条件となります。准看護師の免許では取得できないため、准看護師の人は看護師免許の取得から必要になるため注意してください。

看護師免許を取得後、5年以上の実務経験とそのうち3年以上は遺伝看護の分野での実務経験が必要になります。そして、看護系大学の大学院修士課程において日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程基準所定の単位を取得していることが必要です。

遺伝看護専門看護師は2016年に特定された専門看護師資格の中でも一番新しい資格ですが、現在、遺伝看護専門看護師を養成している教育機関は、聖路加国際大学大学院看護学研究科、東海大学大学院健康科学研究科、新潟大学大学院保健学研究科の3つです。

遺伝看護専門看護師は2017年の12月ごろに誕生予定となっているため、詳しい試験内容や合格率などの情報はまだありません。現在は、3つの大学院が認定されていますが、遺伝看護専門看護師のニーズの高まりとともに今後も認定される大学院は増えていくことが考えられます。

遺伝看護専門看護師の期待される仕事内容とは?

遺伝看護専門看護師の期待される仕事内容とは、どのような内容なのでしょうか?

遺伝看護専門看護師の仕事内容は、主に遺伝子診療部や遺伝相談室、患者相談室、産科外来、がん相談室などにおいて患者さんの相談や意思決定のサポートなどを行う活躍が期待されています。

すでに遺伝子レベルの疾患を抱えた患者さんやその家族、胎児への出生前診断などを考えている母親などに対して、遺伝子に関する情報や治療方法などの情報提供や相談に乗ることが遺伝看護専門看護師の役割として期待されています。

遺伝子レベルの治療や疾患はまだ不明なことも多く、医療の進歩によって出生前に診断などが可能になりましたが、倫理的な問題も多く議論が必要となっていることもあります。そのような遺伝子レベルでの病気の診断や治療における意思決定をサポートすることやカウンセリングを行い、不安を払拭することも遺伝看護専門看護師の仕事内容です。

また、患者さんの相談やサポートだけでなくスタッフの相談に乗ったり、教育や指導も行うことも仕事内容になります。遺伝看護専門看護師は現場の看護だけでなく、病院全体の看護の質を向上させる取り組みも担っており、幅広い活躍が期待されています。

遺伝看護専門看護師が活躍できる職場環境とは?

遺伝看護専門看護師が活躍できる職場環境とはどのような職場なのでしょうか?

遺伝看護専門看護師が活躍できる職場としては、主に遺伝子診療部がある大学病院や県立病院などになります。遺伝子診療科は研究施設が整っている大学病院などに多く、地域の病院などでは少ない傾向にあります。

現在は大学病院などの規模の大きな病院がメインですが、遺伝看護専門看護師のニーズの高まりとともに活躍できる職場は広がっていくことが考えられます。特に、出生前診断などを行う人も増えてきているため、遺伝看護専門看護師によるサポートも求められてきています。

大学病院の遺伝子診療部だけでなく、産科領域での活躍も期待されており、部署にとらわれずに病院全体だけでなく、地域全体を通して活躍できる日も来るかもしれません。

そして、遺伝看護専門看護師の仕事内容の一つには、専門知識及び技術の向上並びに開発を測るために実践の場のおける研究活動を行うことも役割であるため、遺伝看護における看護ケアや関わり方など、看護に対する研究も行っていきます。


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