病棟看護師10年を経験した後手術室認定看護師になって意欲増大

病棟看護師時代の患者さんとのあれこれエピソード

私は大学を卒業後国立病院の病棟看護師として15年程働きました。外科、小児科、産科、眼科、整形外科病棟です。15年間病棟看護師をしていて辛かった事や、良かったなと思った事等色々経験しました。それ以外にも透析センターで透析看護師として勤務した期間も1年位有りました。同僚とのチームワークが良かった病棟、全く歯車が合わず患者さんに迷惑をかける事が多かった病棟での勤務もありました。

一番辛かったのは癌か病棟で勤務していた時の事です。15歳の少年が網膜剥離の手術を受け1週間程入院していました。彼は小学４年生になったばかりの春に、朝顔を洗ってタオルで顔を拭いて目を開けたら片方が全く見えなくなっていたのです。それで慌てて近所の眼科を受診、網膜剥離と診断され私が勤務する病院に紹介状が書かれ手術を受けたのでした。彼の場合は一部だけでは無く、大部分の網膜が剥離している状態でした。

術後の状態は思わしくなく結局片方の視力を失ってしまったのです。私は彼の担当で彼の落ち込みや、ご両親の落胆ぶりをずっと傍で見ていましたからとても残念で辛かったのです。丁度私の息子も彼と同じ年齢でとても他人事とは思えずかなり公私混同してしまいました。後で分かったのですが彼の網膜は先天的に余り強い方では無く、タオルで眼球を強くこすった事で剥離してしまったのです。

逆に働いていてとても微笑ましい楽しい想い出も有りました。外科病棟で勤務していた時の事です。80代の高齢の女性患者さんが、圧迫骨折で手術の後入院していました。その患者さんは何度か大部屋を転々としていたのですが、いつもその患者さんの居る部屋からは笑い声が絶えないのです。手術が終わったばかりの女性が、笑いを堪えるのが大変だと私に笑いながら訴えて来ました。苦情では無く楽し過ぎると言う訴えでした。

そのお婆さんをいつも見舞いに来ていたのが、これまた楽しいちょっとやんちゃそうな40代後半位の女性でした。言葉も乱暴でどこか粗雑な感じのする女性でしたが、心の中に温かい物が溢れている様な人柄でした。入院しているお婆さんに向かって容赦ない言葉、それに答えるユーモアたっぷりの元気な返答。同じ病室の中は又笑いが溢れます。てっきり実の親子かと思っていたら義理の関係だったので驚くと同時に羨ましくさえ感じました。

苦労して手術室認定看護師資格を取得した達成感が次の目標を生む

想い出を二つ挙げましたが勿論ここに書き切れない程多くの色んな想い出がありました。その後は長年の実績を認められ手術室看護師へと配属が変りました。いくら長年の経験があるとは言え、手術室での勤務は今までの分野とは全く違い戸惑う事も多かったです。手術室と言う特定の状況では集中力も半端なく必要ですし、長時間に及ぶ立ち仕事でお手洗いにも簡単には行く事が出来ません。

仕事内容は手術道具の準備や管理、手術中のドクターへの手術器具の手渡し等があります。間違えたり時間がかかったりするとドクターから叱られたり、患者さんに迷惑がかかってしまう事になり兼ねませんからいつも神経はピーンと張り詰めています。例え叱られても動揺せずに落ち着いて業務をこなして行かねばならないので、休日は十分に休みをとる必要があります。

救急で患者さんが搬入されて来る時もあります。その時にはいつも以上に空気が張り詰めます。でも無事手術が済むと、何とも言えない様な大きな達成感に包まれるのです。そして術後患者さんが元気になり退院して行くのを見ると、本当に嬉しくなるものです。手術室と言う特別な空間でそこで携わる全員が一丸となって一つの事をやり遂げるこの作業はここで働いた経験のない人には分からないと思います。　

手術室看護師になって3年経ち、手術看護師長から手術室認定看護師の資格を取らないかと言われました。現在看護協会の調査では手術室認定看護師は約270名程おられ活動されている様です。仕事内容は実践、同僚への指導に相談役も含まれます。 折角声をかけて頂いたので大変そうだとは聞いていましたがスキルアップの為に挑戦してみようと思いました。

手術認定看護師になるには手術看護師教育機関（東京女子医科大学看護学部）、認定看護師教育センターで連続半年以上の教育課程を修了させなくてはなりません。そして日本看護協会が年一回実施する、筆記試験による認定審査に合格しなければならないのです。こう言った技術アップ研修を協力的に支援する病院もあります。私が働く病院も協力的な病院でしたので挑戦する後押しをしてくれたと思います。

私は約一年かけて全ての過程と試験にも合格し、晴れて手術室認定看護師となりました。登録者は五年ごとに書類審査を受け更新して行く必要がありますが、苦労して取得したのでこれを生かして今後の手術室看護師の指導や患者さんの為に生かして行きたいと思います。まだ先の目標ですが将来的には、訪問認定看護師の資格を目指したいと思っています。